■2005.10.19(水) 新橋SOMEDAY 稲垣貴庸 BIG BAND
稲垣貴庸 ds &leader、 鈴木正則 tp、岸 義和 tp、佐久間 勲 tp、伊勢秀一郎 tp、フレッド・シモンズ tb、三塚知貴 tb、筒井弘之 tb、山城純子 btb、澤田一範 as、近藤和彦 as・fl、佐藤達哉 ts、庵原良司 ts、竹村直哉 bs、井上祐一 p、安東章夫 b
心配されていた台風も過ぎ去り、雨も上がってほっと安心の東京新橋夜7時。この時間ですでにお客様は5分の入り。3ヶ月のインターバルを皆さん楽しみに待っていてくださったことが伝わる開演前の雰囲気です。7時45分スタート。このときはもう満員。うん、目の前には今陽子さん。ひょっとしての期待。さあ今日も元気で行こう。
1stセット 1.Norwegian Wood 2.Basically Blues 3.Love For Sale 4.Round Midnight 5.In a Mellow Tone 6.Cotton Tail 7.Willow Crest
2nd セット 1.Time Check 2.Girl Talk 3.It Don't Mean a Thing 4.Someone to Watch Over Me 5.Ya Gotta Try 6.Pretty Girls 7.Big Swing Face 8.Polka Dots and Moonbeams 9.Westside Story Medley アンコール Cute
<1stセット>
●1曲目はNorwegian Wood。三塚さんの滑らかでダイナミックなTbソロが最初の盛り上がり。続いてas近藤和彦さん、いながきバンド初登場です。のっけからメチャかっこいいフレーズの連発です。いつも通りの分厚いブラスサウンド。音圧を浴びる感じです。今日もいいスタートだなあ。
●2曲目はご存知定番、Basically Blues。井上さんのピアノから入り、DsとBのバッキングで曲のベクトルが決まる感じですね。伊勢さんらしいやわらかく包み込むような、暖かいF.Hrの音。筒井さんのTbソロを受けてバンドのみんなのテンションが上がって行きます。3ヶ月ぶりだものYIバンドの音が溜まってた感じで、ほとばしり出てくるサウンドとフレーズの数々。庵原さん、今日も元気です。近藤さんの顔見世フルート。昨日突然近藤さんに稲垣がお願いしたらしい。のっけからこんなに見せちゃって聴かせちゃっていいんでしょうか。エンディングに続くところでの転調がまたお客さんを盛り上げます。いいぞいいぞの気分。この辺のつかみというのでしょうか、さすがバンマス稲垣のリーディングです。
●3曲目 Love For Sale 歯切れのいいテーマ。Tpの音が冴え渡ります。昔のTDKカセットADのコマーシャルで使われたフレーズを思い出しました。マイルス・デビスを起用した「突き抜ける高音の冴え」です。鈴木正則さんに稲垣感謝です。岸さんの軽快なソロに続いて佐藤さんの達也節です。「よっご両人」というところ。いつ見ても達也さんのスタイルは印象に残ると言うか目に焼きつく吹き方ですよねえ。ちょいと左肩が入った感じの独特な立ち姿も決まっています。そして稲垣のドラミング。これがまたいいねえ。稲垣、今日の乗りはまた一段といいです。
●4曲目 Round Midnight 井上さんのきれいなほんとにきれいなVerse風のソロから入ります。そこに分厚いブラスのテーマが乗っかってきます。そして伊勢さんのソロ。ここは伊勢さんしかないねという音です。さらに近藤さんのアルトとフレッドさんのTbソロ。ああ、おいしい音と歌を腹いっぱいいただいています。ああうれしい。ちなみに私は定番のサムデイライスを食べてました。
●5曲目 ご存知、Duke Ellingtonナンバーの In a Mellow Tone。 YIバンドはバディ・リッチのアレンジで。楽しくうれしくなる曲ですね。Stevie Wonder が名曲Sir Dukeを捧げたその気持ちが分かる気がします。この曲でもDuke Ellingtonのすばらしさを実感します。とくに、いつもいつも思うのですが、Sax5人衆の総立ち揃い踏みサウンドは鳥肌が立ちます。豊かさと輝きが一斉に襲ってくる感じで、ああ、ビッグバンドってほんとにいいっすね、と気分は水野晴男さんになってしまうのです。ソロは佐久間さん、三塚さん、井上さん。今日のPAはとくにソロの音の通りがとてもクリアでした。さすが音にうるさい、SOMEDAYマスターならではのゴキゲンサウンドです!
●ここで稲垣のロングトーク。シンバルメーカーZildjianから提供を受けたハイハットの話、稲垣うれしそうに語ります。今日はトークも滑らか。ついでにもらったプロモーションビデオの話がまた傑作でした。稲垣の大好きなドラマーSteve Gadd がこのハイハットを立てて演奏開始。『ああいいなあと思い、ずーっと見続けているんですが、なかなかハイハットに触れない。あれれあれれと思ううちに終わってしまった。途中、「チッ」と1回触っただけであとは一切触らなかったハイハットプロモーションビデオでした。』稲垣の話に会場大爆笑。稲垣の話はペーソスがあっていいんだなあ。
と、稲垣MCがいつになく!盛り上がっているそのときに、突然グラリグラグラーーーーー。そうです。東京名物の地震です。天井のPAスピーカーが不気味に揺れています。オイラどうしようどうしようと思いつつ、誰も席を立つ気配なく様子見のうちに収まったからよかったけど、次にまた来たら僕は間違いなく飛び出したね。そこで、稲垣慌てず騒がず、ローカルトーク。『僕は父の実家が群馬渋川なんです。ここは雷の名所、その凄さを何度も何度も経験しているんで、ジシン・カミナリには結構ジシンあるんです。』という、稲垣のホンワカだじゃれで、お客さんも落ち着きました。絶妙だったね。イナガキトーク。稲垣バンド始まって以来の地震直撃ライブレポートでした。
●6曲目 Cotton Tail 伊勢やんのソロから庵原さんのソロへ。エネルギーの詰まったフレーズを堪能しました。
●7曲目 Willow Crest 佐久間さんのTpをフィーチャー。熱いなあ、いいなあ、この曲はTpの音を思いっきり楽しめる。ってことはTp隊は大変なんだろうなあ。次の曲まで間空けないと辛いんじゃないかなあ、と思っているうちに終了。地震と稲垣ロングトークで予定時間を大きくオーバー。ここで1stセットは「タイムアウト」となりましたので、次は「時間管理」に注意して「タイムチェック!」からはじまることになりました。
<2nd セット>
■1曲目は Time Check 庵原さんのソロ。力強い低域から会場の空気を貫くような高域まで、熱いダイナミックなメロディーラインです。次いで井上さんのソロ。曲想が豊かというのでしょうか、バンドのテンションを盛り上げ、聴く人をいい気持ちにさせてくれるソロでした。 またまたSAX5人衆スタンディング。かっこいいなあ。単純にそう思います。
■2曲目 Girl Talk 今日は伊勢さんがリードです。甘く美しく泣けてくるフレーズで始まるバラードの名曲。イメージは都会の夜、バーの窓際(窓のある店なのです)、夜景の中を人々が行き交う、テーブルをはさんで向かい合う二人が時々微笑を交わしジンを飲む。二人をジャジーなサウンドが包んでいく。ああ、こんな体験したいな、そんな空想が一気に広がる、伊勢やんのサウンドでした。
■さあ、予想通り今陽子さんの登場です。 3曲目 It Don't Mean a Thing そして4曲目 Someone to Watch Over Me 陽子さんは本当に歌うことが何よりも好きなんだなあ、と今日もまたしみじみ思わされました。それもビッグバンドをバックに歌うことがとりわけうれしいんだろうなあ、と全身で表している気がしました。仕事ではなく、いながきビッグバンドが大好きな友人・姉さんとして歌ってくれるんだから、稲垣幸せだよねえ。アップテンポなナンバーとスローバラードの取り合わせがいいねえ。ピアノの井上さんとより添って歌うシーンもよかったなあ。またまた、大いにもうけちゃった感じです。
■5曲目 Ya Gotta Try 筒井さんと三塚さんとのTbバトルです。ビートの利いたアサヒスーパードライ系の筒井サウンド、深さと丸みを感じさせるキリン一番絞り系の三塚サウンド(ゴメンナサイ、勝手に講釈たれてしまって。でもそれくらいキャラクターの違いがはっきりしていて印象に残ったのです。そしてどちらも非常に心地よかったのです。)の競演でした。
■6曲目 Pretty Girls この曲はトーーーゼン澤田さんです。この曲があればもう何も要らない。すべての女性を好きになってしまう、媚薬のような名曲です。澤田さんの真骨頂(おっとっと、誤解のないように、コメントは曲についてです)ですねえ。こういう曲は。とにかくやさしい、美しい音色とフレーズ。この曲のためにあるのかと思わせる澤田サウンドでした。
■7曲目 これを聴かなきゃ始まらないBig Swing Face 。壺にはまったYIBBのテーマ曲のひとつといっていいんじゃないでしょうか。30年やってきたけど、いつ何回プレイしても楽しいぞ、と思いながら演奏している(と勝手に解釈してしまう)うれしい曲。ソロは井上さん、近藤さん、武村さん。コメントの必要がないね、この曲は。
■8曲目 Polka Dots and Moonbeams 岸さんのソロです。岸さんの音を聴いてて思ったのですが、というよりいつもいつもそう思うのですが、稲垣はほんとにメロディーのいい曲が好きなんだなあ。 ドライブ感に富んだアップテンポな曲も、このように美しいバラードにしても、曲想を問わず惚れ惚れするメロディーを持った曲が稲垣の好みかなと思ってしまう。今度会ったときにそこんとこじっくり聞いてみよう。
■9曲目 Westside Story Medley 堪能した、おいしかったの気分です。
■アンコール Cute これもすばらしい曲ですねえ。稲垣のブラシ、きれいだなあ。軽やかにさわやかにやさしくそして芯の通った音です。ああ、ごめんなさい。もう僕のボキャブラリーが尽き果ててしまいました。そろそろ時間です。
長い長いレポートにお付き合いくださってありがとうございました。次回からはもっと短く書くように努力します。保証はしませんが・・・ 2005.10.30